読むとクスッと笑える美容師出口寛之のブログ

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掌編小説4th[半額時間【ハーフプライスラベリングタイム】]

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僕は、ひとりのおばさんと目が合った。

獰猛な目つき。

獣のようなファーをつけているその様は、まるで百獣の王を思い浮かべるほどだった。
 

 

ここはとある近所のスーパー。

僕はよくここに午後6時ごろ買い出しに来る。

 

そう、半額になる時間[ハーフプライスラベリングタイム]を狙って。
 

 

スーパーによって半額になる時間は違うのだが、ここは大体6時半が相場だ。

僕は毎日通っているからわかる。

この店のルーティーンだ。
 

 

僕は精肉コーナーに向かう。

今日狙うべき獲物は三つ。

 

 

「あなたのことを痺れさせちゃう! 豚タンレモン炒め」2個。

 

「ほっぺとろけるで! シンプルカルビの盛り合わせ」1個。
 

 

ここの店は肉がとにかく安いことで知られている。

 

だからできたら即完売が普通なのだが、たまに時間とタイミングの関係で余る。

そういったタイミングを僕は毎日張り込むことによって、感覚的にわかっていた。

 

 

「あなたのことを痺れさせちゃう! 豚タンレモン炒め」2個を狙おう。

400グラム入って半額になると200円。

二日分の夜ご飯になるとして、一日100円。

最高だ。
 

 

 

俺は静かにその時を待つべく、精肉店近くのふりかけコーナーで時間をつぶすことにした。 

 

最近はいろいろなものが種類として出ている。

 

俺はサケが圧倒的に好きだ。王道。

これほど素敵な言葉はないとも思っている。
 

 

 

そして、その時は来た。

精肉店奥、鮮魚コーナーから半額シールを授かりしもの、降臨。

 

 

真っ白の割烹着のような作業服には、ところどころシミがついていた。お仕事お疲れ様です。
 

 

俺は敬意を払って、一礼した。

ニコッと笑ってくれた。
 

 

授かりしものは商品の整頓をしていく。

 

そして魔法のシールを商品に貼っていく。

貼るごとに商品が輝いているように見えた。
 

 

そして精肉コーナーへ。

と、そこには驚きの光景が広がることとなる。
 

 

 

百獣の王が精肉コーナーをにらみつけるその後ろに、多数の群れが確認された。

 

その数7、いや8か? 

 

奴は仲間を引き連れてすべてをかっさらうつもりらしい。上等だ。
 

 

俺はにやりと笑い、その時を待った。
 

 

そして、その時は来た。

授かりしものが奥の部屋へと消えていく。

 

と同時に、群れを率いる百獣の王が目の前の獲物へと一直線に向かっていった。
 

 

 

俺もその中に突っ込んでいき、乱戦状態を形成。

 

群れの中に敵がいると判断した奴らが、俺に一斉に襲い掛かってくる。

 

俺はそいつらの攻撃をよけながら、犯罪にならない程度の拳を腹へとめり込ませ、そいつらを退けていく。

 

だが、それでも勢いは止まらない。

 

「とった!」
 

 

群れの一人が何かを取り、乱戦状態の中からすらりと出ていく。

 

カルビだった。よし、俺の豚タンはまだとられていない。

大丈夫だ!
 

 

 

そう思っていた矢先、何者かの攻撃が頭をかすめる。これは。

 

「あんたにあたしの夕食は譲らないわ」
 

 

 

百獣の王が利き手であろう右手にもった軽いとげ付きのカバンを振り回し、乱戦状態を解除していた。

 

周りの群れは、一斉に吹っ飛ばされる。
 

 

お前の仲間じゃないのか? と聞くと、

 

「そんなわけあるかい」
 

 

と、大阪人バリの突っ込みが返ってくる。

と同時にカバンが振り回される。

 

俺はとにかくよけることだけに集中した。

 

いつか必ず隙ができるはずだ。

それを待つんだ。
 

 

そうして何度も攻撃を受けていると、あることに気づいた。

 

[あいつ、カバンを振り回した直後にフリーな時間が一瞬だけできる]
 

 

俺はそのタイミングを待った。そして、来た。
 

 

 

奴が振り回して顔をゆがませる。

 

そして次の攻撃に移ろうとしたその瞬間、空白の時間ができた。

 

俺はすかさず得意の回し蹴りを放つ。
「があ!」
 

 

百獣の王は鮮魚コーナーへと吹っ飛び、俺は一人になった。

 

よし、これで俺は節約をすることができる! 
 

 

 

そう思ったとき、

 

「お、肉半額になってんじゃん。買って焼肉パーティーしようぜ!」

 

 

「そうだね!」
 

 

すっとかごの中に肉を入れる中年男性ときれいな女性。
 

 

 

 

あ、あの! と声をかけるも、女性の方が本当にきれいな方だったので、僕は何も言えなかった。