読むとクスッと笑える美容師出口寛之のブログ

Itami / HYOGO salon RUN assistant✂︎ 電話予約はこちら↪︎ [072-784-3357] カラーモデル&スパモデル募集 予約用LINEはこちら↪︎ [rox7366w]

掌編小説1st[部屋決め]


f:id:hosikuzu0525:20161130093442j:image

 

「だから、何度も言ってるじゃない!」
 

とある休日、その空間に机を大きく響かせる音と同時に怒声が響き渡った。
 

その空間は一瞬凍り付き、何事かとそちらのほうを一斉に見る。
 

私は今日、新しい住まいを探すために賃貸住宅サービスに足を運んでいた。
 

たった三年で家を変えるのもなんだか変な感じがしたが、引っ越したくなったのだからしょうがない。
 

だって不便だもの。

 

「ですから、先ほどもご説明させていただいたんですが……」
 

対応している若い男の人は少し困った表情をしながらも、何とかその女の子二人組を対応していた。
 

私は今部屋を契約し終わるころで、担当の人を待っている状態で正直暇だった。

なので、その二人を観察することにした。

 

「違うの! これはウッドな感じじゃなくて木目なの!」

 

「わかる!? 住んでいるときにウッドが感じられないといけないの! 木目調ではだめなの」

 

「は、はあ」
 

 

どうやら二人は部屋をシェアするようだ。

二人で住むことによって家賃が半分になるから、割安といえば割安である。

 

「でしたら、コイらの部屋などはいかがでしょうか?」
 

 

びびーっと印刷して持ってきたのは一枚の紙。

 

私も少しだけ覗き込んで、内容を見てみる。

 

「あら、これいいんじゃない?」
 

 

一人の女がそう言った。

私もいいと思った。二人で住むには大きすぎるくらいの部屋。
 

 

だが、もう一人の表情は少し曇っていた。

 

「あ、いいと感じてくださいましたか? そちらは家具などがすべてついております。テレビに洗濯機、クーラーも。専用のベランダもありますので、ご安心いただけるかと」

 

 

「いや、でもなー 仲は良いけど見た目が」
 

 

少し顔の曇っていた女の子がそういうと、

 

「だよねー 私も今そう思っていたところ」
 

 

女の子も同調した。

 

「で、でしたらこちらとこちらではいかがでしょうか?」
 

 

びびーっと二枚の紙を同時に持ってくる担当の方。二人の女は食い入るように見る。

 

「あ、これいいじゃん!」

 

「いいかもね」
 

 

どうやら二人ともお気に召したようだった。少しだけ覗き込んでみる。
 

 

2LDKのお部屋で、リビングがとても広く作られている構造。吹き抜けている感じが何とも言えない開放感を醸し出している。

いいじゃん。

 

「こちらお気に召してくださったようですね。こちらにいたしますか?」
 

 

店員さんは二人に問いかけながら、値段を提示する。

 

「これにしよっかなー」

「え、でもこれ結構高いんだけど」
 

 

料金は80000円。

一人当たり40000円でそんなところに住めるんだったら安いと思ったが、どうやら二人は高いと感じるらしい。

 

「もうちょいウッドな感じで、安いのありませんか? お金がなくて」

「か、かしこまりました」
 

 

担当さんは困り果てているのが目に見えてわかった。額に汗がにじみ出ている。

 

 

「一人当たり25000円くらいがいいよね。それでウッドな感じで見た目もウッドで、広くて住みやすいかんじ」

「わかる」
 

 

二人の意見は一致している。

 

「こちらがぎりぎりになるかと」
 

 

焦った担当の方が急いで持ってきた一枚の紙。二人の女は見る。

だが、難しそうな顔をしていた。

 

「もーわかんない! ほかの人に聞いちゃおう!」

「まじで! それいいアイデア!」
 

 

その二人は、なぜかはわからないが私のほうにずかずかと近づいてきた。

私がじーっとみていたのを不満に思い、何かを言われるのかと一瞬焦ったが、

 

 

「ねえ、こっちとこっち。どっちがいいと思う?」
 

 

急に部外者の私に質問をしてきた女。

一瞬驚いたけど冷静になった私は。

 

 

「す、好きなほうにしたほうが後で後悔しないと思うよ」

 

と、涼しい顔で返しておいた。

 

「だよねー!」
 

 

女は満足したかのようにスキップで席へと戻っていった。
 

 

自分達の住むところなんだから自分で決めやがれ! という感情は口にせず、私は手続きを終えてその場を後にした。

 

 

 

 

 

のちに聞いた話によると、あの二人は結局部屋が決まらずに帰り、それ以降来ていないという。謎が深まるばかりだ。