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読むとクスッと笑える美容師出口寛之のブログ

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掌編小説[雨の中]

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「ピッチピッチチャップチャップランランラン!」

 

雨の中はしゃぐ、一人。

 

「もう、ほんとに雨が好きなんだから」

 

その人にしょうがないなーという気持ちの垣間見える姿で寄り添う人一人。

私は毎日繁華街にあるテレビで天気予報を見るのだが、今日は太陽のマークがいっぱいであった。

時には人間も嘘をつくことがあるのだなと、私は新たな発見をすることができてうれしく思う。

 

「うわー、砂も水を含んでカチカチだー!」

 

一人は雨の日に使う道具を使わず、ずぶぬれになった状態で砂場へとかけよる。

手で砂場の砂をぎゅっとつかみ取ると、えいっと遠くのほうへ投げる。

それをもう一人は少し離れたところで見守っている。

 

「山を作ろう!」

 

一人は、そこにある砂をかき集めてどんどん積み上げていく。

次第に高くなっていき、座っている一人と同じくらいの高さにまでなった。

あそこまで高いものは久しぶりに見るなと、私も少し感心してしまう。

 

「よし、トンネルを掘るぞ!」

 

一人は右手を使って山の下のほうを掘り進めていく。

 

「ふふ、雨ってやっぱり素敵! だって僕の存在をより強めてくれるもん」

 

その一人は、トンネルを掘り進めながら独り言をつぶやいている。

どうやらあの人は、雨が好きなようだ。

 

「よし、できたぞ。お母さん! できたよ!」

 

少し遠くにいたお母さんと呼ばれるもう一人が、ゆっくりと近くに来る。

 

「あ、鉄棒だ! わーい」

 

一人はお母さんと呼ばれるもう一人が何かを言う前に、少しさび付いた鉄棒のほうへと駆ける。

 

「ぴちゃぴちゃだねー あははー」

 

一人は砂場と鉄棒のある場所の間にある水たまりもお気に入りのようだ。

足で水をはじく。

水に交じって泥も一緒にはね、その人の足付近にはねる。

 

「汚れたー!」

 

そんなことを言いながらも顔は嬉しそうだ。

 

 

鉄棒にたどり着く。

手に触れる。

 

「この棒にしたたる水滴もいいよね、本当に」

 

そんなことを言いながら、その人は一回転。一回転。一回転。

何度も回転する。

 

「さあ、風邪をひいてもいけないし、そろそろ帰りましょうか」

 

「うん、そうだね。今日はもう満足だね! 楽しかったね、お母さん」

 

見守っていただけのお母さんと呼ばれるもう一人が声をかけると、遊んでいた一人がぱっと遊ぶのをやめ、お母さんと呼ばれていたもう一人に駆け寄る。

お母さんと呼ばれている人はカバンの中からタオルを出し、肩に抱き寄せた人間にかぶせる。
拭きなさいと言われて、その人は素直に指示に従う。

一人はびしょぬれ状態。大丈夫だろうか。

私はその人を見て、ちょっと心配になる。

 

「それにしても今日もだめだったね、お母さん!」

 

「そうね、また明日行ってみましょうね」

 

私はここで気づいた。

お母さんと呼ばれる人が、あまり嬉しそうな感情を抱いていないことに。

心配そうな表情を浮かべ、少しため息をついているようにも見える。

公園の外へと歩を進める二人。

そうして公園を出る間際、お母さんは一つの気持ちを吐き出した。

 

「はあ、この子の就職はいつ決まるのかしら」

と。

 

その二人が出て行った公園は、雨の音だけがあたりを支配していた。

 

 

 

 

 

私は人間ではないからあまりわからないが、人間はいつも何かにとらわれているように見える。

毎日ご飯を食べるために狩りをして、食べて、寝るだけでいいと思うんだけどな。

まあ、なんとも人間らしいものを見せてもらった。

さて、私も体調を崩さないように戻るとするか。

そうして私は、草陰を抜け出して自分の飼われてやっている家へと帰路に着くのであった。