読むとクスッと笑える美容師出口寛之のブログ

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掌編小説9th[雪合戦]

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「よし、雪合戦をやろう」
 

 

唐突に僕の親友石井君が言い出した。

 

「いいな! それやりたい」
 

 

と、給食の時にかならず牛乳三個飲む中庭君も賛同する。
 

 

僕も面白そうだったので参加することにした。

 

で、バランスが悪いとのことでもう一人入れることになったのだが、

 

「わ、私でいいの?」

 

「「あなたしかいらっしゃいません」」
 

 

僕の親友でオタクのくせにコミュニケーションのある石井君と、牛乳の中庭君は声をそろえて言った。
 

 

彼女は我妻さん。

 

この学校で、というか日本を飛ばして世界で一番かわいいのではないかと言われているくらいの美少女だ。

 

そんな彼女が入ってくれた理由はたぶん

 

「あんたと遊びたくはないけど、雪合戦はやりたいからはいるわ」
 

 

幼馴染だからであろう。

なんだかいつもこんな感じで突き放すような言葉を放ってくるけども。

 

「よし、じゃあ、じゃんけんでわかれようか」
 

 

そう言うと、親友石井君と牛乳中庭君は入念な準備体操を始める。

 

こんなに寒いのに、湯気が出るほどに。

 

「必ず我妻さんと一緒になる一緒になる一緒になる一緒になる一緒になる一緒になる」

 

「我妻さんの牛乳が飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい」
 

 

石井君の発言はまだ許せるのだが、牛乳中庭君の発言は聞き方によってはかなり危ない発言のような気がしてならない。

 

「よし、いくぞ。じゃんけん!」

 

 

「なんでよりにもよってあんたと一緒なのよ」
 

 

それは神様に聞いてください。
 

 

それよりも、相手からの殺気がすごい。

しかも僕にだけ向けられている。

 

「よし、ルールは簡単。相手に三回当てたら何をしてもいい。いくぜ!」
 

 

ちょっとまて三回当てたら何をしてもいいってなんだ。

 

お前らなんだその欲望にまみれた表情は。
 

 

 

そして勝手に始まった雪合戦。

 

不意を突かれた僕は早速一発当たってしまう。

 

なので、即座に作っておいた壁に避難する。

 

「もう始まったのね。じゃあ、えい!」
 

 

我妻が小さい雪玉をふんわりと投げる。

女の子らしく。
 

 

それを中庭君は口でキャッチした。

 

「我妻さんの味がする。ぐふ」
 

 

とりあえず中庭に全力でぶつけておいた。
 

 

もう一回ぶつけ、ひん死状態にまでもっていく。

すると、脇からの石井君の攻撃に被弾。

僕は身動きが取れなくなってしまう。

 

「あんたもうだめじゃない! 隠れてなさい。私の球を作って」
 

 

雑用に回ることになった僕は、横からの攻撃に気を付けながら球を生成していく。

 

我妻の攻撃はなぜか100パーセント被弾。

 

なぜ? いや待てよ。

よく見るとあいつら被弾しにいってやがる。

馬鹿だ完全に。

 

「我妻さんの攻撃が全体に染み渡る」
 

 

牛乳中庭君はアウト。
 

 

石井君も残り二回。

と、ここで僕は気づいてしまった。

 

「我妻、耳貸して」
「な、なによ」
 

 

耳打ちした内容に若干の驚きと照れを見せた我妻は、壁から出てあちらサイドへと近づいていく。
 

 

石井は思った通り、近づいてきた我妻に驚き、動けなくなってしまう。

 

「ねえ、石井君」

「な、なんでしょうか?」

「私を、見て」
 

 

そうしてゆっくりと接近していく我妻と石井。

 

石井は死にそうだ。
 

 

とここで、僕はサイドから一発石井の腹部に向かって投げる。

ヒット。そして最後。

 

 

「おしまい」
 

 

我妻の雪を握りこんだ顔面グーパンチで勝負あり。

 

「私たちの、勝ちね」
 

 

ああ、もはや雪合戦でもなんでもなかったけどな。

 

「本当にそうよ。あんなことやらせるなんて。後であんたも殴る」
 

 

そう宣言された俺は冗談だと思って帰ったのだが、きっちりと顔面に一発もらった。

 
 

 

 

のちの話で石井はこう語る。

 

「女神がいた」と。
 

 

牛乳の中庭君はこう語る。

 

「僕の中には我妻さんが入っているんだ」

 

と。
 

この二人は大切にしていこうと思った。

掌編小説8th[アプリケーション]

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「ねえ、これって最近はやりのknowじゃない?」

 

「そうだよー 写真撮ろう!」
 

 

そんなカップルを、僕は暇だから観察していた。
 

 

世はクリスマス。

 

みんな浮かれてるけど、一人の人の誕生日だからな? 

言ってしまえばただの平日だからな?
 

とか思いながら、僕はチョコをポリポリ食べていた。

クリスマスに彼女からもらったという設定で。

 

「はいチーズ! 素敵」

 

「君はこんなアプリ使わなくてもかわいいよ」
 

 

爆発しろと思った。

 

「ねえねえ、どこか食べに行きたいなー 」

 

「じゃあ僕が調べるよ」

 

「あ、そのアプリはコットペッパーグルメだね。それも使ってるんだー」

 

「そうなんだ! 便利だし。ポイントもついてお得だからね」
 

 

その辺でラーメンでも食ってやがレこのへたれやろう。

 

「あ、ここのパンケーキおいしいみたいだから行ってみようか? 食べるよログでもランク高いし」

 

「そうだね!」
 

 

そうして二人は歩き出そうとするが、

 

「道はどっち?」
 

彼女がそう聞くと、

 

「うーんちょっと地図の読み方がわからないな。ガーグルマップで検索してみるよ。ついでにririでも聞いとくわ」
 

 

彼氏は機械を駆使し、こっちだよと言って案内し始める。

彼女はそれについて行く。

もちろん僕もついて行く。暇だし。

 

「最近このアプリおもしろいよ。ゲームも出来るし。あ、あとこれも。お店の混み具合とかも検索できるんだ。あ、後コンパスも結構使うよね。後はブログ投稿アプリとか、クーポン発行してるアプリとかも使いながらだと結構生活って便利だよな!」

 

「それは違うと思う」
 

 

急に彼女の方が立ち止まった。

どうしたんだ? と触ろうとする彼氏の手を振り払い、彼女は静かに感情をぶつけ始めた。

 

 

「あなたはアプリに支配されすぎですね。アプリがないと何にも出来ないの? 道なんて何度もきてるんだからわかるでしょ? 方向音痴なの、あなた。何でもかんでも調べようとするな。人に聞け。だからいつまでたっても人間関係を構築できないんだろうが」

 

「ちょ、ちょっと待って」
 

 

彼女の反抗を何とか食い止める彼。

おもしろくなってきた。

 

「確かに僕は何にも出来ないし、いろいろなものにも頼るからそうやって見られてもしょうがないかもしれない。でも、でも! 僕は君のことが好きだから!」
 

 

そう言って彼は彼女を抱き寄せる。

彼女は彼氏の名前を息をするがごとく吐き、

 

 

「なめんなよてめえ」
 

 

超高速至近距離ボディーブローを放った。

 

「かはぁ」
 

 

放たれた彼はその場でうずくまり、彼女の方を見上げる。無表情だった。

 

「それもアプリだろ」

 

「……ぇえ?」
 

 

そう言って彼女は一つのアプリを彼の顔面に突きつける。

 

【ドキドキ! 彼女の気をなだめる言葉ランキング!】

 

「さっきの言葉、第一位だったわ。おまえがこれを持っていることは前々から把握してたんだよ」

「 そ、そんな」

 

「じゃあね。あなたとはもう一生会うことはないでしょう」
 

 

 

そう言ってその二人は別れた。

彼の敗北によって。
 

 

いやー良いものを見せてもらった。

 

これで家に帰っても何とかなりそうだな。

良い暇つぶしになった。
 

 

嗚呼、彼女ほしい。
 

 

そうして僕は寂しい背中を見せながら帰路についた。

掌編小説7th[回転すし]

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あの皿がほしい。

僕はそうずっと思っていた。
 

 

今年、全国的に300店舗ほど展開している大手すしチェーン「やっぱ寿司」の30周年特大イベントが行われている。
 

 

だが、このイベントは何をしているかまでは情報として公開されていない。

 

イベントが行われているはずなのにイベント内容を公開しない。

やっぱ寿司の粋な計らいってやつか。
 

 

でも俺は、最新機器スマートフォンを駆使し、一つの情報を手に入れていた。

 

やっぱ寿司の幹部が、一部情報をとある情報サイトに間違って一瞬だけ流してしまったらしい。

 

それをたまたま拾った人が情報として再度流してくれたのだ。

 

だが、その情報も何者かによってすぐに消されたらしい。
 

 

信ぴょう性に欠けたが、すぐに消されたともなると信じてもいいのかもと思ってしまう。

 

嘘の情報ならば、そのままにしておくはずだからだ。
 

 

だから俺は、やっぱ寿司に入店する。

 

「いらっしゃいませー!」
 

 

 

店内から活気のある声が響き渡る。

 

後に続いてほかの店員さんも返してくれる。
 

 

俺はここの接客が好きだ。

 

みんな笑顔だし、かわいいし、かわいい。

 

職人さんのネタを乗せるさばきは完璧だ。

 

自動で生成されるシャリに一寸の狂いもなくおかれる。

 

「何名様でしょうか?」
 

 

一名とだけ答えて店員さんが

 

「ご案内しますね」
 

 

と言って俺をカウンターに誘導しようとする。

 

だが俺はここで、ネットで見た例の言葉を口にする。

 

金のつぶ、カモーン!】
 

 

俺はやばい奴だと思われたのだろうか? 

 

お客さんで気づいた人もこちらを向き、何事かと身構える。

 

「お客様、どうされましたか?」
 

 

ほら、バイトっぽい子に不思議な目で見られてるよ。

 

ああどうしよう、噂だったのかなー 怖いなー こっからどうしよう。

 

「ちょいと待ちな」

 

「店長!」
 

 

バイトの子が目を輝かせてみているのは、おそらくここの店長だと思われるがタイのいい男である。

 

腕っぷしが強そうで、けんかをしたら一瞬で負けてしまうだろう。

そのくらいのオーラを放っていた。

 

金のつぶ、案内してやるぜ」
 

 

そう言われて俺は、一番奥の席を超えて厨房に入り、その奥にある謎の部屋に連れてこられた。

 

「お前がなぜその言葉を知っているのかも知らないが、知っているのなら仕方がない。やろうか」

 

 

な、なにをするんでしょうか? 

腕をまくり上げているところを見るとけんかだろうか。死ぬ。

 

「なにビビってんだよ。さあ、始めるぞ」
 

 

そう言って目の前に、床からすしの流れるレーンが現れた。

 

 

「これが今回の特別商品だ」
 

 

そう言って見せてくれたのは、あの伝説の皿。

 

【やっぱ皿】だ。

創業当時、100枚だけ限定的に作られてプレミアの価値がついている皿で、僕がやっぱ寿司のファンになってからめちゃめちゃほしかったものである。

 

純金らしい。

輝きが著しい。
 

 

その皿はレーンに置かれ、高速回転を始める。

 

 

「このサラダを完食してこのお皿を取ることが出来たならば、お前にこの皿をやろう」
 

 

そのサラダは、創業当時からわずか二年で人気をなくしてしまったという伝説のサラダ【やっぱサラダ】

まずいらしい。

とにかく。

 

苦みがどうとかすっぱいとかそういった類ではないらしい。

 

 

「食べることが出来なければ、お前はここで一日働いてもらう」
 

 

よし、いけるな。

このやっぱサラダを食べることが出来れば俺は100万の値打ちがつく皿を手に入れることが出来る。
 

 

いただきます!
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして口に含んだ瞬間、僕はなぜか働いていた 。

 

 

 

口に含んだ瞬間、僕は意識を失ったらしい。イコール食べれなかったから働く。
 

 

ものすごく忙しかったが、なんだかんだ憧れのやっぱ寿司で働けたのは好都合だったと思う。

 

「また、挑戦してくれよな」
 

 

 

店長にそう言われ、店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 


 その後聞いた話なのだが、やっぱ寿司はなにやら経営難に陥っていたらしい。

人件費を削るために、わざと情報を流してやっぱサラダを食べさし、無料で働かせる。

全くできた話である。
 

 

なので、半年の経営ストップが言い渡されたとニュースで見た。
 

ネットで見てみると。

「あのイベントがどうたらこうたら以降、無銭で働かされた。殴られた」
 

 

などの書き込みが多数を占め、こういうことになってしまったらしい。
 

悪いことはしてはいけないなと、道にガムを吐きながら思った。

掌編小説6th[手帳]

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私は社会人になってから、自己管理ができていない最低のクズ野郎と言われてきました。

ですが、そんな自分とも今日でおさらばです!
 

 

じゃじゃーん! 遂に手帳を買いました! 

私いっつもカレンダー買わなくて今が何日かもわかっていなかったので、本当に便利です! 

 

これで自己管理しちゃうぞ!
 

よし、まずは予定を書き込んでみよう! 

 

そうだなー最初に友達と遊びに行く予定!
 

 

日曜日は美奈子と映画で、その次の日曜日がみんなと飲み会でしょ? 

 

で、仕事終わりの水曜日に今一番気になってる男の子との食事会! 

ふふ! 

 

こうやって書き出してみると、なんだか楽しくなってきちゃう!
 

 

そして次に一人ご飯の予定! 

 

まあほぼ毎日外食するから、どこに行くかを書き込むだけなんだけどね! 

 

牛丼、パスタ、焼き肉、鍋、コンビニ、カップラーメン、ハンバーガー、ファーストフード。

 

 

いろいろ食べたいものがあるから、給料日だけおいしいもの食べちゃおうかな! 

 

高級中華とか! 私辛いもの好きなんだよね!
 

 

そして、一番嫌な仕事の予定。

 

あ、いっぱい先に書いちゃったから、書くところが小さくなっちゃった。

 

まあいいか、かけたら大丈夫だし。
 

 

仕事ってなんでしなくちゃならないんだろう? 

わかんない。

 

早く結婚して専業主婦になりたいな。

 

だって働かなくてもいいから。

 

毎日テレビを見て、ご飯食べて、旦那の帰りを待つ。

 

そして毎日ラブラブ! 

 

ああ、あの人とそんな風に過ごせたらどんなに幸せなんだろう!

 

「ただいま。かえって早々、君の瞳に吸い込まれそうだよ」
 

 

とか言って抱きしめてほしいな! お風呂入るときも

 

「もう、脱ぎっぱなしにして!」
 

 

とか言いつつもその人のものすべてを洗濯機に放りこみたいな! 

 

いや、その前にあの人の汗のにおいをたっぷりと堪能してから保存するのもありかも。ふふ。
 

 

 

妄想が広がってとまらない! 

 

ああ、早くあの日が来てくれないかなー!
 

 

手帳に書き込んで妄想を広げている私に次の週、悪夢が降り注ぎます。

 

 

「おい! 何時間遅刻だと思ってるんだ!」

 

「ふぇ? ちゃんと16時に来ましたけど?」
 

 

上司が、時間通りに来た私を頭に血管を浮かせつつ怒る。

 

これってあれかな? 

 

ゆとり世代とそれ以外のひずみってやつ?

 

「何を言っているんだお前は! 集合は10時だと言っただろうが!」
 

 

え? そうだったっけ? 

 

私は最近記入し始めた手帳に目を通す。

 

確かに16時と書いている、のか? 

 

よく目を凝らしてみると、10時に集合としっかりと書いてあった。

 

ていうか私、午後は午後って書いてから書くから勘違いなんてするはずないのに! 

 

もう、自分のバカ!

 

 

「俺を6時間も待たせやがって! さあ行くぞ!」

 

「仕事ですよね。大丈夫なんですか?」
 

 

そう、私はいつもの仕事着で来いとこの上司に言われていた。

 

ということは仕事。

 

取引先を待たせていたら私のせい! 

どうしよう!
 

 

でも、次の上司の発言に人生で最高に引く。

 

「わしとご飯だ。親睦を深めるためのな!」

 

「あ、大丈夫です」
 

 

親指をぐっと挙げて笑顔な私のことを6時間待っていた上司に吐き気がし、一瞬でその場から逃げるように去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその翌日の水曜日。

 

「ごめん、待った?」
 

 

待ってないよーと元気に返事をして、今気になっている彼との楽しみだった食事会!

 

ついた場所は高級レストラン! 

わかってる! さすがイケメン!
 

 

先に予約をしておいてくれたのもイケメン! 
 

 

料理はコース形式らしく、出てくるまでに時間がかかった。

 

 

「この間はごめんな」
 

 

なに? 何のこと? と問うと、彼は気まずそうな表情を浮かべる。

どうしたんだろう。
 

 

そんなに怒ってないよ! 

 

ととりあえずいうと、彼は少し顔を明るくしてこう言い放った。

 

 

「よかった。先日父が朝の10時に君をご飯に誘ったらしいんだけど、来なくて待っていたら君が来て、舞い上がってきざなセリフを吐いたら逃げられたって。それで怒ってるかもしれないから謝っといてくれって言われたんだ」

 

 

「あ、大丈夫です。帰ります」
 

 

 

私は料理には一切目もくれず、その場を後にした。
 

 

 

 

手帳に書く内容は、明確に且つわかりやすく、内容も示しておくべきだとこの時私は思った。

掌編小説5th[三分クッキング]

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「よし、今日は暇だから動画でもとろうかな」
 

 

僕は今日超絶に退屈していた。

 

本当は友達と遊ぶ約束をしていたのだが、

「ごめん、急用ができて」

「ごめん、急用ができて」

「ごめん、急用ができて」
 

 

と、三人とも奇跡的に同じ断り文句で断られた。

絶対にこの三人はグルだから今度とっちめてやろう。
 

 

そんなことを思いながら、僕はどんなどうがにするかな悩む。
 

 

コーラを飲み干してみた。いや、面白くない。

 

歩いてみた。歩きたくない。

 

何もしないで面白い動画。あれだ!
 

 

 

僕はあの料理番組にのっとって、軽い動画を作成することにした。

 

 

その名も「僕の三分クッキング」
 

 

 

例の三分クッキングをまねてやってみようと思う。

 

 

「さあ始まりました。僕の三分クッキング。用意するものはこちらです!」
 

 

そうして僕が用意したものは、みんなが大好きカップラーメン。

 

 

「こちらにお湯を注いでいきますねー」
 

 

 

そして注ごうとしたとき、僕は気づいてしまった。

 

お湯がないことに。
 

 

まずい! 

このままでは三分では収まらなくなってしまう! 

今から鍋で高速でお湯を沸かしたとしても2分はかかる。

そこから三分またなくてはならないカップ麺なのに動画に収まりきらない!
 

 

いや待てよ。

某番組でも実際は10分の枠で番組枠がとられているじゃないか。

しかも料理のスピードを実際に計ってみると6分はかかっている。

実質三分ではない!
 

 

いや。これもありなのか? 

 

なんか友達の佐藤君が言っていたような気がする。

 

「カップラーメンを三分待つ奴は素人。30秒が通だね」と。
 

 

佐藤君はどこにでもいる普通の中学生、いや、見た目からは想像することもできない奇怪な動きをする彼に、どこにでもいるとかいうありきたりな言葉を当てはめてはいけないのかもしれない。
 

 

この理論が通じるならば、2分でお湯を沸かして5秒で入れ、30秒待てば完成したところまでをあたかも三分待ったかのようにして表現することができる。
 

 

よし、これで行こう! 
 

 

ぴぴ。
 

 

ここで何かの終わりを知らせる音がなく。

 

僕はそれが三分立ちましたの合図だと気づくのに少し時間を要した。
 

 

僕は急いで画面を確認する。

 

確かに三分立っていた。
 

 

 

おかしい! フィクションの世界では今僕が考えていたことがすべて一コマで収まるから、時間軸的には一秒もたっていないはずだ!
 

 

 

とか現実逃避をしてみたが、やっぱり時間は三分立っていた。

 

これは事実だった。
 

 

 

現実は僕たち人間に厳しかった。
 

 

僕はゆっくりとお湯を沸かし、きっちり三分待ち、面をすすった。

掌編小説4th[半額時間【ハーフプライスラベリングタイム】]

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僕は、ひとりのおばさんと目が合った。

獰猛な目つき。

獣のようなファーをつけているその様は、まるで百獣の王を思い浮かべるほどだった。
 

 

ここはとある近所のスーパー。

僕はよくここに午後6時ごろ買い出しに来る。

 

そう、半額になる時間[ハーフプライスラベリングタイム]を狙って。
 

 

スーパーによって半額になる時間は違うのだが、ここは大体6時半が相場だ。

僕は毎日通っているからわかる。

この店のルーティーンだ。
 

 

僕は精肉コーナーに向かう。

今日狙うべき獲物は三つ。

 

 

「あなたのことを痺れさせちゃう! 豚タンレモン炒め」2個。

 

「ほっぺとろけるで! シンプルカルビの盛り合わせ」1個。
 

 

ここの店は肉がとにかく安いことで知られている。

 

だからできたら即完売が普通なのだが、たまに時間とタイミングの関係で余る。

そういったタイミングを僕は毎日張り込むことによって、感覚的にわかっていた。

 

 

「あなたのことを痺れさせちゃう! 豚タンレモン炒め」2個を狙おう。

400グラム入って半額になると200円。

二日分の夜ご飯になるとして、一日100円。

最高だ。
 

 

 

俺は静かにその時を待つべく、精肉店近くのふりかけコーナーで時間をつぶすことにした。 

 

最近はいろいろなものが種類として出ている。

 

俺はサケが圧倒的に好きだ。王道。

これほど素敵な言葉はないとも思っている。
 

 

 

そして、その時は来た。

精肉店奥、鮮魚コーナーから半額シールを授かりしもの、降臨。

 

 

真っ白の割烹着のような作業服には、ところどころシミがついていた。お仕事お疲れ様です。
 

 

俺は敬意を払って、一礼した。

ニコッと笑ってくれた。
 

 

授かりしものは商品の整頓をしていく。

 

そして魔法のシールを商品に貼っていく。

貼るごとに商品が輝いているように見えた。
 

 

そして精肉コーナーへ。

と、そこには驚きの光景が広がることとなる。
 

 

 

百獣の王が精肉コーナーをにらみつけるその後ろに、多数の群れが確認された。

 

その数7、いや8か? 

 

奴は仲間を引き連れてすべてをかっさらうつもりらしい。上等だ。
 

 

俺はにやりと笑い、その時を待った。
 

 

そして、その時は来た。

授かりしものが奥の部屋へと消えていく。

 

と同時に、群れを率いる百獣の王が目の前の獲物へと一直線に向かっていった。
 

 

 

俺もその中に突っ込んでいき、乱戦状態を形成。

 

群れの中に敵がいると判断した奴らが、俺に一斉に襲い掛かってくる。

 

俺はそいつらの攻撃をよけながら、犯罪にならない程度の拳を腹へとめり込ませ、そいつらを退けていく。

 

だが、それでも勢いは止まらない。

 

「とった!」
 

 

群れの一人が何かを取り、乱戦状態の中からすらりと出ていく。

 

カルビだった。よし、俺の豚タンはまだとられていない。

大丈夫だ!
 

 

 

そう思っていた矢先、何者かの攻撃が頭をかすめる。これは。

 

「あんたにあたしの夕食は譲らないわ」
 

 

 

百獣の王が利き手であろう右手にもった軽いとげ付きのカバンを振り回し、乱戦状態を解除していた。

 

周りの群れは、一斉に吹っ飛ばされる。
 

 

お前の仲間じゃないのか? と聞くと、

 

「そんなわけあるかい」
 

 

と、大阪人バリの突っ込みが返ってくる。

と同時にカバンが振り回される。

 

俺はとにかくよけることだけに集中した。

 

いつか必ず隙ができるはずだ。

それを待つんだ。
 

 

そうして何度も攻撃を受けていると、あることに気づいた。

 

[あいつ、カバンを振り回した直後にフリーな時間が一瞬だけできる]
 

 

俺はそのタイミングを待った。そして、来た。
 

 

 

奴が振り回して顔をゆがませる。

 

そして次の攻撃に移ろうとしたその瞬間、空白の時間ができた。

 

俺はすかさず得意の回し蹴りを放つ。
「があ!」
 

 

百獣の王は鮮魚コーナーへと吹っ飛び、俺は一人になった。

 

よし、これで俺は節約をすることができる! 
 

 

 

そう思ったとき、

 

「お、肉半額になってんじゃん。買って焼肉パーティーしようぜ!」

 

 

「そうだね!」
 

 

すっとかごの中に肉を入れる中年男性ときれいな女性。
 

 

 

 

あ、あの! と声をかけるも、女性の方が本当にきれいな方だったので、僕は何も言えなかった。

掌編小説3rd[200メートル徒競走]

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「さて始まりました。3年生のかけっこです。それぞれが頑張っております」
 

 

盛り上がる会場。主に観客席。

それぞれのお父さんとお母さんがその運動場にひしめき合う。
 

 

 

俺はそんな中でも、最高の席を確保していた。

 

前日を無理やり公休にし、前日の夜から徹夜組張りの力を発揮。

本当は徹夜をして並んではいけないのだが、何とかばれずに済んだ。

 

「あなた高橋君のお父さんですよね」って言われた時が一番焦ったが、「いいえわたしはただの高橋です。独身です」といって振り切った。

 

何とかなったはず。

 

「あなた! 慎吾よ!」
 

 

 

俺の嫁、ななみが僕の肩を強くたたきながら興奮気味に伝えてくる。

ついに慎吾の晴れ姿が見れるんだな!
 

 

俺は自前の長望遠レンズを構え、撮る、撮る、撮る。

 

最高のシーンを収めまくった。

実に10秒間の間に100枚。

 

「あなた、慎吾2着だったわ! 佐藤君が1着だったみたいね。悔しいわね」
 

 

ななみが涙を流す。

俺はそうだなといいつつ、ななみの頭をぽんとたたき本命の競技へと出向く。

 

 

「次は徒競走200メートル、父親編になります! ここぞという父親の皆さん、ふるってご参加ください!」 

 

俺は一目散にスタートラインへと向かう。

そして入念なストレッチ。

よし、調子は良さそうだ。

靴紐の確認。

完璧だ。

吐き気。

なし。

最高だ。

 

 

 

「また貴様か」
 

 

 

この声はと、そちらのほうを向く。

 

佐藤の親父だった。

 

久しぶりだなと答えると。

 

「さっきは息子が勝たせてもらったよ。このまま俺も勝たせてもらうぜくそ野郎が!」
 

 

なんて野蛮なくそ野郎だと思ったが、そこは抑えて走るときに爆発させようと思った。

 

「では、位置についてください!」

 

「位置につけよてめえ」
 

ついてるよとっくに。

 

 

「よーいどん!」
 

 

 

始まったと同時にスタートダッシュをかけたのは、佐藤だった。

あいつは去年もそうだったが、スタートダッシュをかけて前半距離を開くタイプ。

俺も前半にかけるタイプなので、出遅れないよう佐藤と並んだ。

 

 

「そうか、貴様も同じペースだったな! だが、ぬるいわ!」
 

 

 

そういうと、佐藤は今のスピードよりも1段階、いや2段階は上げて来やがった。

 

あんなペースで走ったらあとが持たないのでは?

 

 

「後が持たないとか今思ってんだろ! バカめ! 貴様とは準備が違うんだよ! 俺はこの日のために半年前から会社を辞めてフリーターになり、マラソンランナー張りのトレーニングを積んできたんだ!」
 

 

 

ばかだ、と素直に思った。

 

こいつは息子の運動会の1競技のために仕事を辞めた。

人生を棒に振ったのだ。

奥さんどうやって養っていくんだよ。
 

 

そんなことを考えている間にもどんどん離されてしまう。

100メートルを超えたあたりから、俺の体力も底をついてきた。

 

あいつはまだ全速力で駆け抜けている。

やってきただけはあるようだな。
 

 

だが、それと負けることは何も結びつかない。

 

俺が負けてしまったら、ななみと慎吾に申し訳ない。
 

 

 

俺は飛ばそうと意気込む、が。

煙草に酒の付けが回ってきた。

普段の生活習慣の乱れから、著しいほどの体力の減少。

俺は自分の体の力を過信しすぎていることに気づいた。
 

 

 

一気にペースが落ちる。

 

ほかのパパにもどんどん抜かれていく。

 

 

「はは! どうしたんだよ! てめえは! そんなもんかよ!」
 

 

 

そんなもんではないと言いたいところだが、そんなもんだった。

 

もう無理だ。死ぬかもしれない。

 

 

「ぱぱ! 頑張って!」
 

 

 

そんなことを考えていた矢先、ラブリーマイエンジェル慎吾の声が確かに聞こえた。

 

聞こえていないのかもしれない。

でも俺には聞こえた。
 

 

 

体のそこから力が湧いてくる。

今までにないくらいに。

これなら、いける!
 

 

俺はそこから飛ばす。足を回転させる。必死に期待に応える。

 

俺が一番だ! 必ずなってやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

最下位だった。